植物ステロール(β-シトステロール)
- 植物ステロールとは多くの植物に含まれるファイトケミカルの一種
- 植物ステロールにはいくつかの種類があるが代表的なのはβ-シトステロール
- くるみに含まれる植物ステロールも殆どがβ-シトステロール
- 植物ステロールは悪玉コレステロールや前立腺肥大症に対する効果がよく知られている
- 植物ステロールは癌(がん)に対する効果も期待されるが、まだ研究段階と言える
- くるみに含まれる植物ステロールは多いとは言えないが、他の栄養成分との相乗効果が期待できる
このまとめの詳細や根拠を知りたい方は引き続きお読み下さい。
植物ステロールとは?
植物ステロールとはフィトステロールとも呼ばれ、ファイトケミカルの一種でもあります。
植物ステロールは植物の中の脂質、特に胚芽油に多く含まれているため、非常に幅広い植物に含まれています。もちろんクルミにも含まれています。
植物ステロールにはブラシカステロール、7-エルゴステノール、カンペステロール、イソフコステロール、スチグマステロール、7-スチグマステロール、β-シトステロール、アベナステロールといった種類があります。
代表的な植物ステロールはβ-シトステロールで、一般的に植物ステロールといった場合はβ-シトステロールのことを指します。くるみに含まれる植物ステロールも殆どはβ-シトステロールです。
植物ステロール(β-シトステロール)に期待できる健康効果
植物ステロールは「健康によい影響を与えるかもしれない植物由来の化合物」という意味を持つファイトケミカルの一種であるためいくつかの健康効果が期待されています。
特に、コレステロールを低下させたり、前立腺肥大症に対する効果はよく知られています。
何に対して効果が期待できるのか?
悪玉コレステロール
植物ステロールはコレステロールに似た性質を持っているため、体内でコレステロールよりも先に胆汁酸と結合することで腸でのコレステロール吸収を抑制する働きがあります。
特に悪玉であるLDLコレステロールを低下させる効果が確認されています(*s1,s2,s3)。そのため、日本では特定保健用食品の許可成分となっていたり、米国では脂質異常症の治療に使われることもあります。
尚、くるみには他にも悪玉コレステロールを低下させるαリノレン酸や抗酸化成分あるので、それらとの相乗効果も見込むことができます。
*s1
Cholesterol-Lowering Efficacy of Plant Sterols/Stanols Provided in Capsule and Tablet Formats
カプセルとタブレットによる植物ステロールのコレステロール低下作用
*s2
LDL-cholesterol-lowering effect of plant sterols and stanols across different dose ranges
異なる投与量でも確認された植物ステロールのLDLコレステロール低下作用
*s3
The effects of phytosterols/stanols on blood lipid profiles
血中脂肪における植物ステロールの効果
前立腺肥大症
植物ステロールの効果としてコレステロール抑制と共に知られているのが、この前立腺肥大症に対する効果です。
ヨーロッパでは古くからβシトステロールが前立腺肥大症の治療に用いられてきており、様々な実験でもその効果が確認されています(*s4,s5)。
*s4
A multicentric, placebo-controlled, double-blind clinical trial of beta-sitosterol (phytosterol) for the treatment of benign prostatic hyperplasia.
βシトステロールを使った前立腺肥大症治療の二重盲検プラセボ比較臨床試験
*s5
Randomised, placebo-controlled, double-blind clinical trial of beta-sitosterol in patients with benign prostatic hyperplasia.
前立腺肥大症患者に対するβシトステロールを使った二重盲検無作為化プラセボ比較臨床試験
癌(がん)
前立腺肥大症と同様にヨーロッパにおいては前立腺がんや乳がんの治療にβシトステロールを用いることがあるため、βシトステロールは癌に対して効果的という見方があります。
いくつかの研究においても植物ステロール(βシトステロール)の癌への有効性を示す多くの実験結果がありますが(*s6,s7,s8)、その殆どはマウスや試験管内での実験で、まだ研究段階というレベルです。人への効果に関しては今後の研究報告が待たれる状況です。
*s6
beta-Sitosterol inhibits HT-29 human colon cancer cell growth and alters membrane lipids.
β-シトステロールは、HT-29ヒト結腸癌細胞の増殖を阻害し、膜脂質を変化させる
*s7
Inhibition of growth and stimulation of apoptosis by beta-sitosterol treatment of MDA-MB-231 human breast cancer cells in culture.
βシトステロールによるヒト乳がん細胞の増殖阻止とアポトーシス誘導
*s8
Beta-sitosterol-induced-apoptosis is mediated by the activation of ERK and the downregulation of Akt in MCA-102 murine fibrosarcoma cells.
MCA-102マウス線維肉腫細胞におけるβ-シトステロールのアポトーシス誘導は、ERKおよびAktの活性を抑制することで行われる
くるみに含まれる植物ステロール
くるみに含まれる植物ステロールはβ-シトステロールとカンペステロールです。
その内、β-シトステロールは100g中87mg、カンペステロールは5mg(引用:United States Department of Agriculture)ですので、くるみに含まれる植物ステロールの殆どがβ-シトステロールです。
β-シトステロールとカンペステロールを合わせても約01%弱しか含まれていませんので微量だと思われるかもしれません。しかし、ブロッコリーで49.63mg、大豆で160.7mg、玉ねぎで14.96mgですから決して少ない量ではありません。
ただし、ピスタチオが244mg、アーモンドが186mgなど他のナッツ類と比べるとくるみの含有量は最も少ない部類に入ります。これはクルミにはαリノレン酸という脂質やその他の栄養成分が多く含まれているせいかと思われます。
くるみに含まれる植物ステロールの量では前述した健康効果を得ることは難しいですが、くるみには他にも多様な栄養成分が含まれているので、それらの相乗効果が見込め、より健康効果が期待できます。
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