エラグ酸
- エラグ酸とはポリフェノールの一種。
- 植物内ではエラジタンニンという成分で存在し、体内でエラグ酸に変換する。
- 強力な抗酸化作用があり、防腐剤として食品添加物にも使われている。
- エラグ酸は美白作用のある医薬部外品有効成分として厚生労働省の認可を受けている。
- エラグ酸はマウスなどの実験で癌(がん)の有効性が確認されている。
- その他、糖尿病や動脈硬化に対する効果も確認されている。
- ただし、エラグ酸の人に対する効果はまだ認められていない。
エラグ酸とは?
エラグ酸とは主に植物に含まれているポリフェノール系の成分です。植物の中でもベリー類やなどに多く含まれている傾向があり、くるみにも多く含まれています。
エラグ酸は単体で植物内に存在している場合もありますが、多くの場合はエラジタンニンという成分で存在しています。エラジタンニンは体内でエラグ酸に変換されることから、エラジタンニン=エラグ酸として扱われることが多々あります。
くるみに含まれるエラグ酸の殆どもエラジタンニンになります。
エラグ酸は強力な抗酸化作用があるため、酸化防止剤として食品添加物にも使われていたり、美白成分として化粧品などにも利用されています。
くるみに含まれるエラグ酸
クルミに含まれているポリフェノール類をクルミポリフェノールと呼ぶことがありますが、エラグ酸はその中心成分と言えます。
エラグ酸はくるみの仁の種皮に多く含まれていて、前述の通り、その多くはエラジタンニンとなっています。
くるみに含まれるエラグ酸の量は明確ではありませんが、ある実験報告によると「和ぐるみ:447.5mg/100g」、「カルフォルニア産のペルシャグルミ:473.5mg/100g」でした。
尚、むきクルミより殻付きクルミの方がエラグ酸を多く含む傾向があり、むきクルミの場合は殻付きクルミの60%程度しかエラグ酸が含まれていませんでした。
エラグ酸に期待できる健康効果
エラグ酸でもっとも知られている効果と言えば美白作用でしょう。何故ならば化粧品の美白有効成分として広くPRされているからです。女性の方であれば良くご存知でしょう。
ただし、基本的な効果の中心はポリフェノールでお馴染みの抗酸化作用です。抗酸化作用は必ずしも健康に良いという訳ではありませんが、エラグ酸の健康効果の多くは抗酸化作用が関わっていると考えられています。
何に対して効果が期待できるのか?
美白(シミ・くすみ)
エラグ酸は日焼けやシミの元となるメラニンの生成を抑える強力な美白作用があることが確認されています(参1)。このことからエラグ酸は厚生労働省の医薬部外品有効成分として認可されています。
癌(がん)
エラグ酸は数多くの実験において癌(がん)の予防や増殖を抑制する効果が確認され、注目を集めています(参2,3)。しかし、その多くはマウスや試験管内の実験で、人に対しては臨床例が少ないため効果はまだ認められていません。
*参2
The Inhibitory Effect of Ellagic Acid on Cell Growth of Ovarian Carcinoma Cells
エラグ酸による卵巣がん細胞の増殖抑制効果
*参3
p53/p21(WAF1/CIP1) expression and its possible role in G1 arrest and apoptosis in ellagic acid treated cancer cells
エラグ酸はp21たんぱく質を活性化させ、G1サイクル停止およびアポトーシスを誘導することでがん細胞の増殖を阻害する
糖尿病
エラグ酸はマウスの実験において糖尿病の要因の一つとされる(悪玉の)レジスチンという物質を抑制する作用が確認されています(参4,5)。このことからエラグ酸は2型糖尿病の予防に効果的と考えられています。ただし、癌(がん)の効果同様、人における効果が認められているわけではありません。
*参4
ザクロ果汁成分「エラグ酸」に「レジスチン」分泌抑制作用 近畿大学農学部グループが発見、糖尿病予防に役立つ可能性
*参5
Ellagic acid in pomegranate suppresses resistin secretion by a novel regulatory mechanism involving the degradation of intracellular resistin protein in adipocytes
ザクロのエラグ酸は脂肪細胞内におけるレジスチンの分泌を抑制する
動脈硬化
抗酸化作用を持つポリフェノールは動脈硬化の予防・改善に効果的と言われていますが、エラグ酸にも強力な抗酸化作用があるため、動脈硬化に対する効果が期待されています。事実、培養実験においてはアテローム性動脈硬化を抑制する作用が確認されています(参6)。
エラグ酸の代謝物ウロリチンAにも健康効果が期待できるかも
エラグ酸には体内の吸収率が悪いという欠点があります。その為、上述した効果は人には期待できないという見解があります。
しかし、近年、エラグ酸は腸内細菌によってウロリチンAという物質に代謝され、体内に吸収されることが分かりました。
まだ研究報告は少ないので不確実ですが、ウロリチンAにもエラグ酸と同様の効果が得られるという報告(参7)があります。
更に、ウロリチンAには「老化した筋肉を修復する」というエラグ酸には無い効果も発見される(参8)など、今後が期待される物質となっています。
*参7
大豆及びザクロのモデル動物実験系を用いた接触過敏症抑制効果の解析
*参8
Urolithin A induces mitophagy and prolongs lifespan in C. elegans and increases muscle function in rodents
エラグ酸の注意点・副作用
前述したエラグ酸に期待できる効果の多くはマウスや試験管での実験が殆どで、人に対する効果を確認するには臨床実験が十分でないとされています。
そのため、エラグ酸の効果性は高いと考えられているものの、人に対する効果はまだ認められていません。
エラグ酸の効果を疑う理由の一つに吸収率の悪さがあります。前述の通りエラグ酸は体内へ吸収されにくいので、十分な容量を摂取するのが難しく、実験で得られたような効果が出にくいと考えられるからです。
このような背景があるにも関わらず、米国では癌への効果を謳うエラグ酸のサプリメント等が多く販売されています。そのような商品には米国FDA(アメリカ食品医薬品局)から注意勧告が出されているので利用しないように注意しましょう。
尚、エラグ酸は食品添加物としても厚生労働省に認可されるなど、安全性が検証されています。
副作用も特に報告されていませんが、妊娠および授乳中にエラグ酸を大量に摂取する可能性がある場合は医師に必ず相談しましょう。
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