アルファリノレン酸(αリノレン酸)とは?
くるみ(胡桃)における最も代表的な薬効成分とも言えるのがアルファリノレン酸(αリノレン酸)です。クルミの半分以上(65.21g/100g中*)は脂質で、その内アルファリノレン酸は約6分の1(9.08g/100g中*)を占めています。
クルミはナッツ類の中でも最も多くアルファリノレン酸を含む
もともとナッツ類は脂質が多いことで知られていますが、その殆どがオレイン酸とリノール酸でアルファリノレン酸(αリノレン酸)を含むものは、それほど多くありません。
”あさ”や”えごま”といった若干馴染みの薄いものを除けば、”くるみ”はナッツ類で最もアルファリノレン酸(αリノレン酸)を含む食品と言えます。
これがナッツ類の中でも特にクルミが注目されている理由なのです。
何故、アルファリノレン酸が注目されるのか?
それでは何故、アルファリノレン酸(αリノレン酸)が多く含まれていると健康に良いのでしょうか?
それには2つの理由があります。
- アルファリノレン酸に血液サラサラ、動脈硬化を抑制するなどの効果・効能があるから。
- アルファリノレン酸の効果・効能を阻害するリノール酸が過剰摂取の傾向にあるから。
1.のアルファリノレン酸の効果・効能に関しては後述で詳しく説明致します。ここではその効能よりも重要と思われる2.のアルファリノレン酸とリノール酸との関係をご説明します。
アルファリノレン酸もリノール酸も体外から摂取が必要な必須脂肪酸で私達の健康に欠かせない成分です。しかしながら現代生活において普通の食事をしていれば、どちらも不足する危険性は極めて少ないと言われています。
逆にリノール酸においては様々な食品に含まれているため、普通の食生活でも過剰摂取になりやすくなってしまうのです。脂質は適量であれば様々な効能・効果で健康に寄与しますが、摂り過ぎると逆効果になるだけでなく、アレルギーや癌(がん)のリスクが高まることが分かってきています。
さらに、アルファリノレン酸とリノール酸(正確にはオメガ3脂肪酸とオメガ6脂肪酸)は互いの効能を牽制しあう関係にあるため、リノール酸の摂り過ぎはアルファリノレン酸の効果・効能を軽減させる結果となってしまうのです。
そのため、現代の食生活ではリノール酸の摂取を減らし、アルファリノレン酸の摂取を増やすことを心がける必要があるのです。くるみに含まれるアルファリノレン酸が注目されるのはそういった理由があるのです。
アルファリノレン酸(αリノレン酸)の成分概要
アルファリノレン酸:Alpha-linolenic acid(ALA)
アルファリノレン酸は脂質を構成する脂肪酸の一種です。脂肪酸には飽和脂肪酸・不飽和脂肪酸がありますが、アルファリノレン酸は不飽和脂肪酸の中の多価不飽和脂肪酸であり、更に多価不飽和脂肪酸のうちのオメガ3脂肪酸系の代表的な脂肪酸です。
オメガ3脂肪酸は体内で生成できないため、食べ物から摂取が必要な必須脂肪酸です。オメガ3脂肪酸は主に魚類や植物油などに含まれています。日本人は魚をよく食べるので昔からオメガ3脂肪酸が不足することはありませんでしたが、食の欧米化が進んだ最近ではオメガ3脂肪酸の不足が懸念されています。尚、日本人の食事摂取基準(2010年版)によるとオメガ3脂肪酸の必要量は成人では1日に2g程度とされています。
アルファリノレン酸以外のオメガ3脂肪酸として良く知られているものに、EPA(エイコサペンタエン酸)、DPA(ドコサペンタエン酸)、DHA(ドコサヘキサエン酸)があります。これらは食品から直接摂取することもできますが、アルファリノレン酸からも生成されます。
アルファリノレン酸の10~15%はまずEPAに変換され、次にDPA、そして最終的にDHAに変換されます。つまりアルファリノレン酸を摂取することで、オメガ3脂肪酸の重要な成分はまかなえてしまうのです。
アルファリノレン酸(αリノレン酸)に期待できる効果・効能
脂肪酸はエネルギー源になると共に細胞膜や様々な生理活性物質の材料となります。アルファリノレン酸は他のオメガ3脂肪酸にも変換されるので、オメガ3脂肪酸が持つ効果・効能が全て期待できます。
オメガ3脂肪酸が持つ作用には主に「中性脂肪・悪玉コレステロールを減らす」「血栓をできにくくする」「脳や網膜の神経伝達をスムーズにする」といったものがあります。これらの作用からアルファリノレン酸には次のような効果・効能が期待できると言えます。
- 悪玉コレステロールを減らす効果
- 中性脂肪を減らす効果
- 抗血栓作用
- 血液サラサラ効果
- 高血圧予防・改善
- 動脈硬化予防・改善
- 心筋梗塞予防
- 脳梗塞予防
- 肥満予防・改善
- ストレス軽減効果
- 脳機能強化
- 記憶力の向上効果
- 集中力を高める効果
- 認知症(アルツハイマー)の緩和
- 視力改善
アルファリノレン酸(αリノレン酸)が不足すると
アルファリノレン酸単体での欠乏症というものはあまり知られていませんが、必須脂肪酸であるオメガ3脂肪酸が不足するいくつかの健康障害が発生する可能性があります。
オメガ3脂肪酸は主に「血管」「赤血球」「脳」「神経系」に作用するため以下のような症状がでる危険性があります。
- 血栓ができやすくなる
- 高血圧
- 動脈硬化
- 脳梗塞
- 心筋梗塞
- 脳機能の低下
- 集中力の低下
- イライラ
- うつ症状
- 視力の低下
また、オメガ3脂肪酸不足によりオメガ6脂肪酸の比率が高まると、オメガ6脂肪酸の過剰摂取と同様の症状が起きる危険性があります。具体的には次のようなものです。
- 善玉コレステロールが減少し、動脈硬化のリスクが高まる
- 過酸化脂質の増加
- アレルギーのリスクが高まる
- 癌(がん)のリスクが高まる
これらはオメガ3脂肪酸の欠乏による危険性ですので、アルファリノレン酸が不足してもEPAやDHAで直接補うことにより回避できるものと考えられます。
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